合意の上で

女が出ていった部屋。オレだけの部屋。

一呼吸つき、静かに鍵をかけた。

丁寧に手を洗い、消毒液を入念に擦り込む。

これでオレの手は無菌。

タネ用のカップを開封。

小さなスクリュー式のジップロックのような容器。

これなら、口が広くてこぼれる心配がない。液漏れもない。

蓋だけ回し、すぐ手の届く場所にセッティング。

くるっ。

振り返ればドリームボックス。

いよいよである。

ぱかっ。

ドリームがモリモリ。

あらゆるニーズに対応、充実のラインナップ。さてと、思案。

、、、なんだと！？目を疑った。

「ふたなり少女」！？、、、おマタにナニかついてる、、、

さすが黒のドリームボックス。ジャンルに隙なし。

オレは真性ノーマル。だが、興味はそそられる。

しかし、検査の大義名分のもと、オレはここにいる。

ネクストドアーを開いてる場合ではない。

一番上のを手に取り、プレイヤーにインサート。

ポチッとプレイ、一人遊び。

外では愛しのYomeちゃんが待っているのだ。

タネ用カップとも合意の上だ。

待ってろ！今すぐイクからな！

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メンズルームへようこそ

女性に案内され、お部屋を内覧。

はだ色で統一された、２畳ほどの個室。

扉には防音が施され、鍵もある。

洗面台には消毒液、精液採取用の小さいカップ。 

懐かしのテレビデオにDVDプレイヤー。エアコン完備。 

リクライニングシートにオットマン、サイドテーブル。

こりゃ、エモい。

ミニマリストなら、これだけで十分暮らせるだろう。

 快適である。気に入った。

「黒いケースの中にはビデオにDVD、雑誌があるのでお使いください。」

他にもフガフガ、部屋とタネ採りの説明を受けた。

が、場の空気にあてられ、まともに耳に入ってきたの「黒いケース」のみ。

普段なら何とも思わないはず。

しかし、今は違う。何というパワーワード。

 ただいまの日本語、オレ流で翻訳。

「ドリームボックスにいろんなネタつまって〼。」

おい女。話は十分伝わった。

早く部屋を出ていってくれ。 

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いきなりだなんて、、、

時は来た。

予約していた病院の日。

初めての不妊治療の相談。Yomeちゃんは問診票をカキカキ。

いろんな不安が入り混じる中、ここへの道中の2人には共通の興味が。

いきなり精液検査されたりして〜。なはははははは！

と、冗談半分。

予約の電話の話では、今日は治療の説明と採血だけ。

待合室で呼ばれるのを待つ。

数組のカップル。数人の女性達。

アイコンタクトで気持ちをシェア。

みなまで言うな。同じ悩み。

おっ、やっと呼ばれた。

予想通り、妊娠までの流れ、確率、治療方法などのお話。

普通の妊娠。不妊治療での妊娠。

どちらの場合でも、BeBeちゃんを授かるれる事が、いかに奇跡的で素晴らしい事なのか、改めてふむふむ。

話も一通り。先生、最後にボソボソ。

「じゃあ、お二人の採血させてもらいます。」

「あと、ご主人どうされます？ＸＸＸＸ。３０分くらいで結果出るけど。」

？？？

うまく聞き取れなかった。まるでお茶に誘われたかのよう。

先生、何って？

今までふむふむ真剣だったYomeちゃん。ニヤニヤする顔見てピンときた。

いきなり精液検査されるのかー！どわわわわわわ！

道中の冗談半分、半分の方がムクムク肥大、現実に。

今、証明された。言葉に魂は宿っている。

よし、先生！その話のった！

オレはYomeちゃんを残し、女人禁制・婦人科の僻地へ。

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スペックとハビット

二人の暮らしぶりについて。

ー 「食」生活　ー

二人とも好き嫌いなし。

きっちり３食、しっかり食べ、間食はほぼしない。

野菜、特に豆が大好き。

畑で無肥料・無農薬で育てたものを食べている。

塩分も控えめ、惣菜は買わず、何でも作って食べる。

インスタント、冷凍食品も食べない。

一見するとピカピカの台所事情。

が、そこはなんちゃって。二人ともかなり酒を飲む。

そして、スパイス・香草に辛いもの、特に中華とカレーにWE'RE CRAZY。

だから、刺激の強いもの、油分は結構とってると思う。

卵子の老化に負けない 「妊娠体質」に変わる栄養セラピー

ー 「住」環境　ー

地方の山間部、いわゆるド田舎に暮らしている。

むせかえるほど吸える、四季折々のフレッシュエアー。

眠たくなったら眠り、自然と目が醒めるまで寝る。

毎日の通勤ラッシュ、交通渋滞とは一切無縁。

生活に必要な分をアルバイトするだけ。

一見するとストレスフリー＆アーリーリタイヤ。

が、もちろんなんちゃって。経済的には太めの綱渡り状態。

渡ってる綱はわずかずつだが細くなっている。

仕事のストレスは皆無だが、経済的なストレスは多少感じている。 

38歳でも妊娠力が高まる!最強の妊活

ー 「体」習慣　ー

二人とも、タバコは吸わない。

外で遊びたい派。外でビール呑みたい派。

朝は30分ほどストレッチ、風呂上がりにヨガ。

夫婦共通の遊び、クライミング歴４年。

身体のすみずみまで使うから相当の運動量。

やったぞ！なんちゃってなし。結果にコミット、仕上がったカラダ！

だがしかし、激しいスポーツ。妊活にどう影響してくるか。

赤ちゃんができる! ファータイル・ストレッチDVDブック (骨盤内の血流を促して妊娠体質に!)

こうしてみてみると、そこそこ健康的・豊かな暮らしを送れてるとは思う。

ほほほほほのじの自我自賛。

が、しかし、

お酒と油分で精子はヘボヘボ。

経済的不安で精子はヘロヘロ。

激しい運動で精子はヘトヘト。

心配のタネは十分ある。

２割部に入部

ところで、不妊とは何なのか？

「妊娠を望む健康な男女が避妊をしないで性交をしているにもかかわらず、１年間妊娠しないもの」と、日本産婦人科学会では定義されている。

ほほぅ、世界的にはどうなのか？

世界保健機構（WHO）は２００９年より「１年間の不妊期間をもつもの」と、定義。

年齢によるバイアスがかかるとはいえ、一般的に１年で約８０％が妊娠するらしい。

かたや不妊の夫婦は約６組に１組と言われ、四捨五入で約２０％。

ごちゃごちゃとあるが、とにかく１年が一つのボーダーラインか。

「１年間　励みに励んで　授からず」

嘆きを句にしたためた結果、オレもYomeちゃんも２割部に推薦で入部確定。  

「にわり部」なんて読んだらションボリしてくる。

せめてハッピーになれるように「つわり部」と読もう。

ぐむむむ、しかし望まぬ入部。

入りたいのはキラキラした８割部の方。

ソッコー退部を目指し、駆け込み寺へ予約の電話。 

受診の日まで、気休めにドーピングしながらその日を待つ。

DHC 亜鉛 60日分 60粒

コトの始まり

アラフォー直前の駆け込みゴール。

二人になっての新生活。

新居への引越しに煩雑な手続き、１年目はわちゃわちゃ。

そろそろBeBeちゃん仕込むか！

２年目、やっと落ち着き、えいえいっ！と励みに励み、Yomeちゃん素直に懐妊の兆し。

早速の内診、初のエコーで映る影３つ。

抜けば当たる！俺のショットガン！

嬉しすぎて毎日が変なテンションヌ。

 「一人でも嬉しいのにいきなり三人も！？ワクワクするなぁ〜！」

と、思って毎日ウキウキしてたのも束の間。

Yomeちゃんが具合悪そうにする日が少し続き、その日は突然。

泣きじゃくるYomeちゃん。

妊娠がわかってから、かじる程度に本を読んだ。

嫁ハンをいたわってやりたい ダンナのための妊娠出産読本 (講談社+α新書)

 こうなる可能性があるコトもわかってた。

年齢的に確率が高いというコトも。

それでも、自分たちは大丈夫という根拠のない自信。

結果、自分たちも確率の一部に。本当にツライかった。

でも強いYomeちゃん、ガンバッて立ち直ってくれた。

そしてまた、そいそいっ！と励みに励んでまた１年。全然ヒットせず。

抜けば当たるはずじゃ！？アレはまぐれだったのか、、、

互いにアラフォー。

年齢的にも心配になってきたし、オレに原因があるのかもしれない。

そう思って、不妊治療の門を叩くことにした。